2009年05月09日

書評:ぼくは猟師になった

ぼくは猟師に.jpg 

 毎週土曜日は、各種おすすめ本を紹介する書評の日。
 
 きょうご紹介する本は、千松信也著『ぼくは猟師になった』です。
 
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 著者の千松さんは、猟をはじめて8年目、
 現在33歳という、僕とほぼ同世代の若手猟師さん。
 
 実家が代々のマタギだった、というようなことは無く、
 生まれと育ちはごくごく普通の一般人です。
 
 猟師といっても、狩猟だけで生計を立てるような「専業猟師」ではなく、
 普通の仕事を持ちながら狩猟もするという「兼業猟師」さん。
 (だいたい、日本に「専業猟師」は1人もいないと思う)
 
 若手農家よりも、若手漁師よりも稀少な存在であろう
 「若手猟師」の生活は、一体どのようなものなのでしょうか。
 
 
 
 日本の猟師の獲物というのは、主に「イノシシ」と「シカ」。
 
 よく「イノシシ猟」なんていう言葉は聞きますけれども、
 具体的に、どうやってイノシシを獲るのかは、普通知りませんよね。
 
 
 著者の千松さんは、銃は一切使わず、
 「わな」だけで獲物を獲る、わな猟専門の猟師さん。
 
 イノシシやシカの「わな猟」について、
 具体的に、詳細に記述してくれています。
 
 
 ・イノシシを獲るためには、どんな罠を使っているのか。
 
 ・とらえた獲物を絶命させるには、どういう方法をとるのか。
  (正解は、そこらへんの木の棒でぶん殴る)
  
 ・内臓処理はどのように行うのか。
 
 ・獲ってきたイノシシの解体は、どのように行うのか。
 
 ・肉を保存するために、どのように加工するのか。
 
 
 そのような、具体的な猟のノウハウが、詳しく紹介されています。
 (ま、ほとんどの人にとっては、一生使うことのない知識でしょうが)
 
 
 獲物別では、イノシシ&シカについての紹介がほとんどを占めますが、
 そのほかにも、カモやスズメなどの鳥類、
 ウナギやアメゴなどの魚類や、海の貝などの「狩猟」についても
 いろいろ紹介されています。
 
 
 魚の世界では「養殖もの」も「天然もの」も存在していますが、
 肉の世界では、99.9%が「養殖もの」ですよね。
 
 豚も、牛も、鶏も、すべて人の手で育てられたもの。
 「天然もの」の肉を食べている人というのは、そうそう、いないはずです。
 
 そんな現代日本で、「自分で食べる肉は、自分で獲る」という
 著者の生活からは、今まで気づくことのなかった問題点を、
 浮き彫りにさせてくれます。
 
 
 例えば、シカ肉について。
 
 
 高級なフレンチレストランなんかだと、
 「鹿肉のソテー ブルゴーニュ風 バレンシアオレンジソースを添えて」
 みたいな、「ゴチになります」に出てきそうなメニューがあると思います。
 
 東京のレストランでは「鹿肉」が消費されているんですよね。
 
 では、そういう鹿肉をどこから仕入れているかというと、
 これはほとんどが輸入物らしいのです。
 
 フランスなどから輸入した鹿肉を使っているらしいんですね。
 
 
 日本で鹿肉は獲れないかといえば、そんなことはない。
 
 むしろ、日本では鹿が増えて増えてしょうがない、
 余り過ぎているくらいだというのです。
 
 でも、鹿を獲る(駆除する)猟師も減っているし、
 鹿肉を流通させるルートもない。
 
 だから鹿肉は、もっぱら猟師さんの自家消費用となっていて、
 レストランなんかには出回らないんだそうです。
 
 で、レストランはわざわざ海外から鹿肉を輸入している。
 日本の山に、美味しい鹿はいくらでもいるのに。
 
 なんだか変な話です。
 
 
 
 そのような新しい視点を得られるのも嬉しいのですが、
 この本の何よりのメッセージは「猟って、楽しぃ!」ってこと。
 
 著者が、田舎で夏休みを過ごす子供のように、
 めちゃめちゃ楽しそうに猟師生活を送っている様子が伝わってきます。
 
 
 僕は猟というと、松方弘樹や梅宮辰夫的なおじさま達がやる、
 アメリカンマッチョなスポーツだと思っていたんですよ。
 
 鉄砲で動物撃ち殺すぜい! これぞ男のスポーツ! みたいな感覚で
 やっているんだろう、という偏見を持っていたんですが。
 
 この本を読んでみると、動物を獲って食べるというのは、
 ごく自然の営みなんだということを、改めて感じさせられます。
 
 
 
 春になって、山に山菜が生えたら、摘み取るように。
 
 秋になったら、肥えたイノシシを獲ってくる。
 
 
 
 それは、どちらも同じことなんだな、と。
 
 僕が勝手に抱いていた狩猟に対する偏見を、拭い去ってくれました。
 
 僕も、今年の冬は猟をやってみようかな(狩猟免許をとって)。マジで。
 そう思わせてくれる本が、『ぼくは猟師になった』です。




 
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posted by 加藤のどか at 11:45| 高知 | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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