2009年05月06日

ルパンに命を救われた

ルパン.jpg

 
 
 十数年前。中学校の卒業式の日。
 
 
 僕は私立の中学校に通っていたので、
 学校までは電車を使って、約1時間ほどの道のりだった。
 
 普段の授業は8時からだけど、今日は卒業式だから9時集合。
 
 いつもより余裕をもって朝の時間を過ごし、
 さて、そろそろ家を出るかと腰を上げかけたそのとき、
 テレビを見て衝撃が走った。
 
 
 
 ルパン三世の声優、山田康雄さんが亡くなったというのだ。
 
 「ふ〜じこちゃぁ〜ん」でお馴染みの、あの山田さんである。

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 僕が最も好きだったアニメ『ルパン三世』。

 小学生のころ、テレビに釘付けになって見ていた『ルパン三世』。
 
 友達と遊んでいても、夕方4時半の再放送が始まるまでには
 必ず家に帰っていた。それほど好きだった『ルパン三世』。
 
 
 
 そのルパンの声優が、亡くなったというのだ。
 
 
 
 当然、知り合いではないのだけれども、
 なんだか親戚のおじさんが死んだような気がして、胸が疼いた。
 
 結局、そのまま10分ほどテレビを見続けてしまったので、
 余裕をもって通学する予定はどこへやら。
 
 いつもどおり、遅刻ぎりぎりの時間で家を出るハメになった。
 
 
 
 学校へは、中目黒から地下鉄日比谷線に乗って行くのだけれども、
 不思議なことに、電車が中目黒からいつまでたっても出発しない。
 
 ただでさえルパン三世のおかげで遅刻ぎりぎりなのに、
 もう十数分も待たされている。これでは100%遅刻確定である。
 
 よりによって卒業式の日に遅刻するとは。恥ずかしい。
 
 
 
 車内アナウンスがあり、どうやら日比谷線で事故が起きたらしく、
 当分電車が動かないとのこと。
 
 
 
 そうなると、これはこれでラッキーなのだ。
 
 というのは、電車が大幅に遅れると、
 駅から「遅延証明書」なるものがされる。
 
 こいつは、いわば遅刻の大義名分。
 「僕が悪いんじゃない。電車が悪いんだ」という、天下御免の免罪符。
 
 これさえあれば、遅刻であっても、遅刻扱いにはならないのだ。
 
 
 
 もともと電車が遅れなくとも遅刻しそうだったのだから、
 どうせだったら、大義名分をもって堂々と遅刻したほうがいい。
 
 僕は駅員から遅延証明書を受け取ると、
 渋谷経由の山手線で、悠々と中学校の卒業式へと向かった。
 
 
 
 さて。
 
 その日、僕の遅延証明書の原因となったのは、歴史に残る大事件であった。
 
 
 
 オウム真理教による、地下鉄サリン事件である。
 
 
 
 あとからニュースを見たら、
 いつも僕が乗っていた車両で、サリンが撒かれていたらしい。
 
 僕は中目黒で足止めを食らったが、その3本前の電車、
 時間にすれば10分ほど前の電車で、何人もの人が亡くなったそうだ。
 
 いつも僕が乗っていた日比谷線の車両に、花束が置かれていた。
 乗り換えで使っていた霞ヶ関駅には、犠牲者を悼む石碑が建てられた。
 
 テレビ画面を通して見るいつもの通学路は、知らぬ場所のようだった。
 
 
 
 あの日、山田康雄さんが亡くなったというニュースを見なければ、
 サリンが撒かれた車両に乗り合わせていたと思う。
 
 もしかしたら、霞ヶ関のあの石碑に、僕の名前が刻まれていたかもしれない。
 
 
 
 ルパンに命を救われた。僕は勝手に、そう思っている。
 

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posted by 加藤のどか at 11:45| 高知 ☁| いろいろなこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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