2009年04月25日

田舎暮らしに殺されない法

田舎暮らしに殺されない法.jpg

 毎週土曜日は、各種おすすめ本を紹介する書評の日。
 
 きょうご紹介するのは、丸山健二著『田舎暮らしに殺されない法』です。
 
続きを読む前に

 
 田舎暮らし関連の本といえば、そのほとんどは
 「田舎いいよ! 田舎に住もうよ!(゜▽ ゜)」という内容のもの。
 
 
 自然はたくさんあるし、近所の人はやさしいし、人間らしい付き合いがある。
 
 水と空気は美しく、早寝早起き、子供たちものびのび育つ。
 満員電車のストレスとも縁の無い、素晴らしい生活が待っている。
 
 田舎暮らしについて書かれた本といえば、
 おおむね、田舎暮らしを肯定的に捉えるものが多いと思います。
 
 
 
 そんな田舎暮らし本業界の中にあって、
 きょうご紹介する『田舎暮らしに殺されない法』は異色の存在。
 
 これでもかっというほどに、田舎暮らしの「嫌なところ」を取り上げます。
 こんなに田舎暮らしのネガティブ面を書き表した本は、他には無いと思います。
 
 
 著者の丸山健二氏は、実際に長野県で田舎暮らしをしている小説家。
 ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B8%E5%B1%B1%E5%81%A5%E4%BA%8C
 
 自らの体験を元に、田舎暮らしが「いかにオススメできないか」を
 語った一冊です。
 
 
 
 この本の読者として想定されているのは、
 「定年退職後は田舎暮らしでもして、のんびり暮らしたいなー」
 などと思っている方々。
 
 若い人や女性を対象とした本ではなく、ターゲットはあくまで
 「定年退職後の田舎暮らしを夢見る団塊世代」に絞っています。
 
 そういう方々が夢見ているであろう田舎暮らしへの幻想を、
 見事なまでに、粉々に打ち砕いてくれます。
 
 
 著者は、以下のような観点から、
 生半可な覚悟では田舎暮らしは務まらない、といいます。
 
 
 ・まず、田舎暮らしには体力が要る。農業をするなら、なおさらのこと。
  椅子に座る会社勤めを何十年もした体では、とうてい無理。
 
 ・自然が美しいとは、生活環境が厳しいということ。
  今まで都会で暮らしてきた人間がそんなところに住むのは無理。
  大雪や台風への対策も、一人でやらないといけない。
  
 ・田舎は犯罪の巣窟。Iターン者なんて真っ先に狙われる。
  田舎の警察なんか頼りにならない。自分の身を自分で守る、自衛の準備を。
 
 ・田舎にプライバシーは存在しない。都会の人間関係よりもずっと大変。
  一度嫌われてしまえば、田舎社会は地獄のようなところになってしまう。
  
  
 
 人間関係が濃密な田舎社会で、もしも嫌われてしまえば、
 毎日のような嫌がらせが待っているといいます。
 
 道で出会っても、顔をそむけられ、口をきいてくれない。
 
 家に蛇を投げ込まれる。近所で枯れ草を燃やされる。
 水道管が切断されて、農薬入りの餌が犬の散歩道に置かれている。
 
 そんな嫌がらせが行われるといいます。
 
 
 実際、著者が田舎に引っ越したときには、
 引越しの荷物を片付けているときに、
 ウサギの死骸を庭に投げ込まれたといいます。
 
 もっとも、著者は見ず知らずの田舎に引っ越したのではなく、
 自分の故郷にUターンでの田舎暮らしをはじめたのであって、
 「ここは陰湿な田舎だから、そういうことがあっても不思議ではない」と、
 嫌がらせも覚悟の上ではあったそうです。
 
 
 
 田舎暮らしに対する意見としては、「素晴らしい」という人がいる一方で、
 「都会よりもずっと大変、おすすめできない」という意見もあります。
 
 好きも嫌いも、両極端に分かれている気がします。
 
 そして、これはどちらかが正しく、
 どちらかが間違っているというものではなく、
 どちらも正しいのだと思います。
 
 みもふたも無いことを言えば「その人」と「その土地」によって、
 田舎暮らしは素晴らしくもあれば、耐え難い地獄にも成り得るということ。
 
 
 『田舎暮らしに殺されない法』の著者である丸山氏は、
 相当大変な田舎暮らしの体験をされたようです。
 
 実際に体験された「田舎暮らしの嫌なところ」を、包み隠さず書いています。
 こういう系統の田舎暮らし本は少ないので、大変貴重な存在です。
 
 
 しかし、誰にでもこのような「田舎暮らしの嫌なこと」が
 降りかかるとは限りません。
 
 幸運なことに、僕はといえば、
 田舎暮らしにおいて耐え難い思いをしたことは、今まで一度もありません。
 
 この本で紹介されるような事例は、どれも経験したことないし、
 見たことも聞いたことも無いのです。
 
 
 僕の田舎暮らし経験においては、
 人付き合いのトラブルもないし、周りの人は親切にしてくれるし、
 水や空気はおいしいし、生活に不便を感じたこともありません。
 
 でも、これは「僕という人間」と「移住した高知県山間部」という土地が、
 うまいことマッチしたために、幸福な田舎暮らしとなったまでのこと。
 
 この土地に移住する10人が10人とも、
 幸福な田舎暮らしを送れるとは思いません。
 
 中には「こんな陰湿な土地、耐えられない!」と感じる人も、
 いるかもしれません(実際にそんな例は知らないけど)。
 
 
 そして、僕がもしも「高知県山間部」ではなくて「徳島県山間部」に
 移住していたら、「もう田舎なんて嫌だ! 都会に帰る!」と
 なっていたかもしれません(徳島に住んだことないけど、例として)。
 
 「僕はどこでも幸せ田舎暮らしが出来る」ということではなく、
 「高知県山間部では幸せな田舎暮らしが出来る」ということでもありません。
 
 たまたま、僕と、この土地がうまく出会ったというまでのことなんです。
 
 
 
 本書『田舎暮らしに殺されない法』で紹介されているような
 「ひどい田舎暮らし」を実際に体験している方も、たくさんいると思います。
 
 実際に、陰湿な、よそ者を受け入れない「田舎」もあるでしょう。
 
 でも、それもやはり「人による」んです。
 
 ほとんどの人が耐えられないと思うような土地でも、
 ある人によっては、天国のように感じるかもしれない。
 
 万人にオススメできるような土地はないし、
 万人が天国だと感じるような土地もない。
 
 そして、万人が地獄だと感じるような土地もないんです。
 
 一人一人の人間が違うように、一つ一つの集落も違います。
 
 
 「田舎暮らし」と一口にいっても、長野県と高知県では違うし、
 高知県でも西と東では違いますし、1キロ離れた集落同士でも違うのです。

 『田舎暮らしに殺されない法』のような田舎暮らしも確実にありますし、
 皆さんがそういう田舎暮らしを経験しないとも限らないのです。
 
 
 そういう意味では、田舎暮らしを考えている方、
 特に「定年退職後は田舎暮らしをしたいなー」と思っている方には、
 自分に冷や水を浴びせる意味で、ぜひとも読んで欲しい一冊です。
 
 決して、読んでいて楽しい本ではありません。
 
 田舎暮らしに対する情熱をたぎらせてくれる本でも、ありません。
 
 ひたすら、田舎暮らしを「おすすめしない」という主張の本です。
 
 
 だからこそ、実際に移住を考えている人に、読んでほしいと思うんです。
 
 だって、もしこの本を読んで田舎暮らしを諦めるようであれば、
 そういう人は将来、田舎に移住したところで、
 幸せな暮らしを送れるとは思わないから。
 
 
 田舎暮らしには、実際に多くのハードルがあると思います。
 
 一冊の本を読んで田舎暮らしを諦めてしまう人であれば、
 実際に田舎で幸せな暮らしを築くのは、難しいと思うのです。
 
 ですから、田舎暮らしへの試金石という意味でも、
 ぜひ自ら、この「冷や水」を浴びて欲しいなと思うのです。



 ついでにもう一つ、ネガティブ田舎暮らし系の本を紹介。
 こちらの舞台は高知県、主人公は女性の一人暮らしです。
 これも、田舎の不便さが分かる一冊。




blogranking

 ↑ランキングに参加しています。面白かったらクリックしてください。



posted by 加藤のどか at 12:00| 高知 ☔| 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。