2009年03月27日

Aさんの鶏の話

にわとり.jpg

 
 
 念願の田舎暮らしを実現させたAさん。
 
 
 Aさんの夢のひとつは、鶏を飼うことでした。都会では鶏を飼うなんてことは、
 近所迷惑にもなるし、とても無理な話。でも田舎ならば大丈夫です。
 
 Aさんは自宅の庭に鶏小屋をつくり、数十羽の鶏を飼いはじめました。卵と鶏
 肉を自給しようと考えたのです。
 
 
 しばらくすると、近所の人から苦情が来ました。鶏の鳴き声がうるさいという
 のです。
 
 Aさんは思いました。たしかに、鶏は鳴く。でも、田舎だったらそれくらい当
 然じゃないのか。都会の住宅街で飼っているわけじゃあるまいし、こんな田舎
 で何を言っているんだ。
 
 おそらく、これは「よそ者」である自分に対する、地域からの嫌がらせなんだ
 ろう。よそ者である自分には、鶏を飼うことも許されないのか。
 
 
 ・・・という話をAさんから聞いたときに、僕は、田舎に住むというのは大変
 なのだなと感じました。

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 Aさんの家がある場所は、明らかに「田舎」。歩いてすぐ田んぼに行けるくら
 いの集落です。町というよりも「集落」でした。
 
 ほとんどの家には、小さな畑がついています。下水道なんて無く、みんなボッ
 トン便所です。こんな土地で「鶏を飼うな」と言ってくる地元の人たちは、な
 んて酷い人たちなんだ。やっぱり、よそ者は受け入れられないのか。そう思い
 ました。
 
 
 さて。この事件に関し、根っからの地元民(田舎人)であるBさんからも話を
 聞く機会がありました。Bさんは、この事件に関し、こう言いました。
 
 
 Aさんが、あの土地で鶏を飼うというのは非常識なこと。というのは、よそか
 ら来た人には分からないだろうけれど、Aさんが住んでいる土地というのは、
 地元の人にとっては「住宅街」。鶏を飼いたいのであれば、もっと人のいない
 ところに行かないといけない。あそこで鶏を飼うAさんのほうが悪い。
 
 
 ・・・という話をBさんから聞いたときに、僕は「おいおい、あんなところが
 住宅街って、そりゃないだろう」と思っていました。どう見ても、あそこは
 「田舎の集落」。あれを「住宅街」なんて、笑っちゃう。そう思っていました。
 やっぱり、あれはAさんへの嫌がらせだったんじゃないか。そう感じたんです。
 
 
 
 それから月日は流れて流れ。
 
 
 
 僕も、田舎の事情がかなり分かってきました。夜7時にスーパーが閉まるのに
 も慣れましたし、近くにコンビニが無いことにも慣れました。
 
 そして、今ならば分かります。Aさんが住んでいた地域というのは、明らかに
 「住宅街」なんです。あそこで鶏を飼うというのは、非常識。地域の人が「鶏
 がうるさい」と文句を言ったのは、当たり前のこと。Aさんに対する嫌がらせ
 ではないと思っています。
 
 
 まさに、Bさんの言葉のとおりなんです。「よそから来た人には分からないだ
 ろうけれど、Aさんが住んでいる土地というのは、地元の人にとっては住宅街」
 なんです。
 
 
 おそらく、Aさんの住んでいる「集落」を見たら、都会人ならば10人が10
 人とも「鶏を飼って何が悪いんだ」と思うことでしょう。すぐそばに田んぼも
 あるし、みんな庭先で野菜をつくっている。そんな場所なんですから。実際、
 Aさんも僕も、その場所で鶏を飼ってもいいと思っていました。都会人と田舎
 人の食い違いです。
 
 
 「地元の人に、なかなか受け入れられない」「嫌がらせを受ける」などという
 Iターン者(都会人)の話を、よく耳にします。そして多くの場合は「やはり
 田舎の地域社会に馴染むのは難しい」ということになります。
 
 Aさんの鶏の話なんて、典型的なもの。この話をAさんから直接聞けば、誰も
 が「やはり田舎社会は難しい、よそ者はなかなか受け入れられない」と思うは
 ず。実際、僕もそう思っていました。
 
 
 でも、今にして思えば、田舎の人が「いわれのない嫌がらせ」をすることは、
 ほとんどありません。99%ありません。
 
 どこにでも、少しは「おかしな人」もいますから、たまに「超口うるさい人」
 が文句を言ってくることは、あります。でも「地域の多くの人」から言われる
 のであれば、それは「いわれのない嫌がらせ」ではありません。「正当な文句」
 の場合が、ほとんどだと思います。
 
 
 そういうケースでは、おそらく、Iターン者が無自覚のうちに、地域のルール
 を破っているんです。すれ違っても挨拶をしない、畑を草ぼうぼうにする、夜
 遅くまで騒いでいる。そのような、Iターン者が何とも思っていない行為でも、
 無自覚のうちに地域のルールを破っていることは、あります。
 
 Aさんの場合は「住宅街で鶏を飼ってはいけない」という、地域のルールを破っ
 たんです。Aさんは、その土地を住宅街とは思わずに「田舎の集落」だと思っ
 ていますが、地域の人にとっては、そこは「閑静な住宅街」なんです。
 
 
 田舎の人にとっては、そこが住宅街であることは、当たり前すぎるほど当たり
 前のことですから、わざわざ説明しません。説明しようとも思いません。Aさ
 んがそんなことに気づいていないことが、考えられないんです。どう見たって、
 ここは「閑静な住宅街」じゃないか。田舎の人は、そう思っています。
 
 
 だから、田舎の人は、こんなふうには説明しません。説明できません。
 
 「よそからやってきた人にとっては、ここは田舎の集落に見えるかもしれませ
  んが、私たちにとっては、閑静な住宅街なんです。この土地で鶏を飼うとい
  うのは、私たちの感覚では、非常識なことなのです。ですから、鶏を飼わな
  いでもらえますか」
 
 こう言えば、Aさんも納得するかもしれませんが、田舎の人は、こういう説明
 が出来ないんです。よそ者がどう感じているかが、分からないんですから。
 
 
 ですから、田舎の人の発言は「鶏を飼わないで」というだけになる。そして、
 Aさんには、その理由が分からない。だから「嫌がらせを受けた」と思うので
 す。
 
 
 結論。
 
 
 田舎の人が「いわれのない嫌がらせ」をしてくることは、ありません。何か文
 句を言われたのならば、それは99%、Iターン者が気づかないうちに「地域
 のルール」を破っているのです。Iターン者にとっては「当然の行為」かもし
 れませんが、田舎の人にとっては「非常識な行為」なのです。
 
 とどのつまりは、「郷に入れば郷に従え」ってことですよ。


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posted by 加藤のどか at 11:45| 高知 ☀| 田舎暮らしのこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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