高知の山奥に、引っ越してきた日。
新しい家に、荷物を運び込み、窓を開けて風を通し。
これから始まる新生活に、不安と夢を抱いていた、あの日。
事件は、風呂場で起きました。
風を通すために、風呂場の窓を開けようと、手をかけた瞬間。
何か動くものが、視界の端を横切りました。
ふと目をやると。
巨大なクモがいます。
大きさは、CD1枚分。
昔なつかしきシングルCDじゃないですよ。普通のCDぐらいの大きさ。
壁に張り付いたクモは、すごい速さで天井へ移動してゆきます。
クモの全身は、黒っぽい毛で覆われています。
タランチュラだっ!
間違いない、タランチュラだ。テレビで見たことある。
全身に鳥肌が立ちました。
何故、高知の山奥にタランチュラがいるのか、分かりませんが。
いるものは、いるんです。巨大なクモが、こちらを睨んでいるんです。
幻覚ではありません。覚せい剤を打った記憶もありません。
とりあえず、風呂場は封鎖! 厳戒態勢!
ハリウッド映画に出てくる、黄色い「CAUTION」というテープが
手元にあれば、あれを風呂場の前に張り巡らしたい気分です。
そして、サイレンを鳴らし、赤いパトランプの光を浴びせたい気分です。
武器は無いか? ものども、武器を持てぇい!
奥さんが手渡してくれたのは「傘」。今、手に入る最強の武器です。
こいつで、クモの周りの壁を叩きながら脅かして、
なんとかして窓の外へと追いやる作戦です。
傘という、なんとも頼りない武器を片手に。
(心の中で)CAUTIONテープをまたぎ、対決の場へと足を踏み入れます。
ヤツは、まだ天井にいます。
とりあえず、窓を開け放ち。
なんとか、この窓へと、あのクモを追い込まなくてはいけません。
おそるおそる、傘の先で、
クモから50センチほど離れた天井を刺激し、振動を送ってみます。
図解すれば、こういう↓形です。
窓の反対側から刺激し、窓へと追い込む作戦です。
┏━━━━━━━━━━━━┓
┃ クモ 傘 ┃
傘 ┃
窓 手 ┃
僕 ┃
┃ 僕 ┃
┃ 湯船 僕 ┃
┗━━━━━━━━━━━━┛
ところが、なかなかクモが反応しない。
いくら、離れたところから、ドンドン天井を叩こうとも、動かない。
死んだのか?(希望的観測)
50センチくらいの距離をおいて始めた「傘での天井振動攻撃」ですが、
だんだん距離は近くなり、今や10センチ。
ちょっと、クモに触れてみようかな?
ほんの少し、傘の先が、クモの足に触れた瞬間。
天 井
↓
↓
↓
↓
ボトッ
イヤァァッァァアァァアアァッアァァ!!!
タランチュラ落ちてきたシィィィイイエァイァアィ!!!(゜△ ゜)
パニックになるタランチュラ。
そして、パニックになる僕。
必死に
「傘の先端でクモの周囲の床や壁を刺激し窓へと追い込む作戦」
を実施! 勇気を振り絞って実施! がむしゃらに実施!
クモは、文字通り、逃げるようにして、窓から出てゆきました。
素早く、窓を閉め!
家の外から、風呂場の窓を見てみると!
家から追い出されたアイツがいます。外壁に張りついています。
今までの戦いは、幻覚ではありませんでした。
タランチュラの出る家。
何故だ? タランチュラは、熱帯の生き物ではなかったのか?
誰かが無責任に捨てたペットが、高知県では野生化しているのか?
明るい新生活を向かえるはずの、高知の新居には。
かなりインパクトのある、先客がおりました。
・・・と、いうのが。
僕と「アシダカグモ」の、初めての出会いです♪(゜▽ ゜)
(タランチュラじゃなかったヨ!)
その後、必死になってネットで情報収集したところ、
件(くだん)のクモの名は、アシダカグモということが判明。
★画像を見たいという度胸のあるヤツは、自己責任でクリックしろ!
http://www.asahi-net.or.jp/~AQ6T-HRG/p200004.htm
http://bunbuku2.web.fc2.com/s-asidakagumo.html
http://mushinavi.com/navi-insect/data-kumo_asidaka.htm
↑こんなヤツが、風呂場に出たわけです。
この外見からは、どう見ても、
噛まれたら5分で死に至るレベルの「劇毒蜘蛛」なんですが。
しかし。
この「アシダカグモ」というヤツ。
毒は、全くありません。
基本的に、性格は臆病であり、人間に危害を加えることは一切なし。
それどころか、アシダカグモの主食は「ゴキブリ」なので、
家の中のゴキブリを一掃してくれる「益虫」だということです。
アシダカグモが1〜2匹いたならば、
その家のゴキブリは絶滅すると言われているくらいの、
「全自動ゴキブリホイホイ(無料)」こそが、アシダカグモの正体。
アシダカグモは、ゴキブリと違い、
人間の食物の上を動き回り、雑菌を振りまくということも、ありません。
やっていることだけを見れば「すごくイイヤツ」らしいんです。
がっ。
あんなものが家にいるのは嫌っ!
ゴキブリがいてもいい! アシダカグモは嫌っ!
と、僕は思います。
事実。
今でも、ときどき、アシダカグモは出現します。
そのときは、再びパニックですよ。
トイレで夜中に出会おうものなら、マジで「ひいっ」とか言っちゃいますよ。
そんなときは、虫取り網を持ち出して、何とかして捕獲します。
殺すのは嫌ですからね。
命がどうのこうのより、あんな巨大蜘蛛を殺すのなんて、不可能。
そんな度胸は、僕には装備されておりません。
毎度、アシダカグモが出るたびに、虫取り網で捕獲し、
歩いて1分ほどの河原へと放ちにいきます。
このアシダカグモ。
関東以北には出現しません。
近畿・中国・四国・九州などの、暖かい地方に出現する生き物です。
西日本で、田舎暮らしを考えていらっしゃる方々へ。
この蜘蛛。確実に出ます。ゼッタイに出ます。
といっても、やはり嫌でしょう。普通は嫌です。
では、どんな対策法が、効果があるのか。
「こまめに掃除をして、餌であるゴキブリを家から無くす」
というのが、メジャーな対策法ですが。これは、二番目の対策法。
一番の対策法は「無視」です。気にしないこと。
実害は全く無いんですから、壁に張り付いていようが、何してようが、
視界に入れないこと。ゴキブリホイホイが働いていると思ってください。
事実、生まれてから田舎に住み続ける生粋の田舎民は、
「無視」という方法で対応しています。
僕が「手のひらぐらいある、でっかい蜘蛛が出たんですよぉ〜!」
なんて言っても。
「ああ、いるね〜。うちにもいるよ〜」
くらいのテンション。
何それ? 何そのローテンション? ありえないんだけど。
こっちが期待する反応は
「あの巨大蜘蛛! うちにも出るよ! そのたびにパニックだよね!」
という、「あるある体験」をしたいんですが。
「クモいるよ〜。で、それがどーかしたの?」的なテンション。
頭おかしいよ、あんた。少しぐらいビックリしろよ! あんなのが出たらよ!
しかし、この「無視するスキル」こそが、田舎暮らしには必要なのです。
ここで一句。
『恐るべし サラブレッドの 田舎者』
僕がアシダカグモを無視できる日々は、やってくるのでしょうか。
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